荻の上のB級観音汁

ある旅人が荻を集めてその上に観音像を置きそれが荻堂と呼ばれた。そこがたまたま窪地だった。それが荻窪の名前の由来である。

きっかけというのはとても小さくて、くだらない。

幾人もの文化人、政治家が愛した荻窪。そのアイデンティティの始まりはゆかりもない旅人の小さな行為だった。そこに地域が生まれた。

たぶんもともと住んでいる人なら観音像を外には置かず、家に置いていたのかもしれない。

でもそこからは何も始まらない。

オープンな場で、知らない人の目に触れる場所で何かをやってみる。そこに窪地のような凹凸があれば何かが形作られる。そうして固有な、ユニークなものが誕生する。

と、荻窪の由来に教訓めいた妄想に馳せながら荻窪を歩いた。

荻窪は善福寺川を挟んだ閑静な住宅地を背負いながらも、

駅前はラーメン、焼き鳥、カレーの激戦区で有名である。

文化的と言われる場所で、B級な文化が育つのはなんだか不思議だけれど、

それが荻窪らしさなのかな、と浅い結論に達した。

そんな荻窪らしい味噌汁、ということで、

ラーメンをあらわした糸こんにゃくをいれた味噌汁に

荻に見立てたネギの上に、

観音様に見立てた焼き鳥を載せた。焼き鳥にはカレー粉もまぶしてみた。

荻の上なんて雑な場所に置かれた観音さまの雰囲気も込めて

「B級観音汁」という名前にしようと思う。

もう少し、焼き鳥に味噌汁が絡むといいなと思ったので、

酒粕を後日混ぜてみたけど、なんだか良い感じになりました。

白濁色になるから少しラーメン感も出たし。

お試しください。